通常オーケストラに歌が加わるのは、声楽でマイクは使いませんが、ポップスシンガーであればやはりマイクを使います。今回の会場は渋谷のオーチャードホール。歌は渡辺美里さんです。ビルボードクラシックスというシリーズでやっているこの企画は、他のアーティストもやっていて、他のライブでは、全てではないですが、個別にマイクを立ててピックアップしていました。日々日常的にクラシックコンサートを見ていたのもありますが、どうにも違和感が拭えません。指揮者がアレンジャーであり、ミキサーであるというスタイルで作っているものに、割り込んでこちらでバランスを取り直すことに全く自信がない訳です。たとえばホルンはこんなに聞こえなくていいと思えば、指揮者は演奏者にアドバイスをするか、演奏する場所を変えたりします。それをマイクで拾って勝手なバランスを作っていいものなのか?と。

マイクを使ったボーカルを会場に響かせる音量に合わせてオーケストラをPAする必要はあると思います。ただその方法が難しいのです。バンドのバックにオーケストラということであれば、それはピックアップしないと効果ありませんが、オーケストラだけですから。

リハーサルも見て、音楽を考え、最終的に考えたプランが写真1です。指揮者の耳になる。ノイマンU-87iを指揮者の両サイドに置きました。基本のPAはこれだけです。ハウらないの?と不安に思う人もいるでしょうが、チューニングを間違わなければそこそこ出せます。

このプランに至るまでかなり悩みました。ボーカリストは初めて接する方でしたし、自分はスポットでここだけの参加だし、シリーズのつながりもあるし、と。しかしどうにも指揮者に代わってすべてをミキシングする気にはなれなかったのです。すべての楽器をピックアップするならば、それを均一に出すことは出来ますが、結局はオフマイクの組み合わせです。それならば、U-87のような太さも出せるマイクですべてを拾おうという決断に至りました。ただし、最も奥にあるパーカッションは箱馬の上に乗せたPCC-160(バウンダリマイク)を4箇所に置き、ディレイをかけて補強しました。またモニターにも必要になるピアノ、ハープ、チェレスタは個別にピックアップにしてわずかに足しました。それとボーカルだけでのPAです。モニターも含めた全体音量のコントロールが必須ですが、生音に包まれる環境で歌えるような必然のPAができれば、絶対にアーティストも満足できるはずという信念の元にスタートしました。

結果は下記のような感じでした。

http://billboard-cc.com/classics/2016/04/misato-watanabe0522report/

(ページの掲載期間はわかりません。なくなってしまうかもしれません。)

 

 

IMG_4069IMG_4074