2022/4/29 日本橋三井ホール。武藤彩未公演

多目的ホールだが、普通にホールの形状。ロールバックを出し、最上部に卓を組む。SPはMLA Compact。時間はかなりタイトだったが、いつも通りのチューニングを開始。システムは構築されているので、こちらで操作できるのは卓の中のEQのみ。SPもフライングしてあり、サブローを転がして置くだけ。いつものようにまずはピンクで測定、データを見てから、いつもの再生機でいつもの音源を出す。「え?」すごく小さい。というか小さく感じる。「これがデフォルト?」という疑問。何か設定が違うか卓の中をチェック。卓は慣れているCLだし、いつも通り。ロックも含むいろいろな催しをやっているはずなので、ちょっとドキドキする。卓のアウトポートで6dBくらい上げてみた。次にMy58で声を出してみる。「ん?これは普通に出る!」というか少し大きいと思いアウトポートを2dBくらい下げて戻す。設定は間違ってはいないようだ。戸惑いながらも、いつものステージのサブチェック。回り込みが少ない。やはり音圧が足りないのか?と疑問を持ちつつもポイントを探り、多少の調整に入る。そしていつものようにフライングから降りてくるサブ帯域のチェック。これがほぼない!帯域が完全に分かれている。ここのクロスでのピーク、ディップの調整をするのが自分流なのだが、ほぼ調整不要。フルレンジでの跳ね返りを微調整。インフィルのアライメント、音量、EQを作ってから、音源を出した。やはり「こない、、、」音圧が足りるのだろうか?という不安を抱えてはいたが、すごく品のいい、CDを聴いているようなサウンドが作られている。そして使用するワイヤレスで声を出すと、ドカンと前に来ているのでヴォーカルは出せそうだが、ボトムがついてくるだろうか?そんな不安の中、規定時間は終了。シュートが終わり、モニターとの鳴り合わせ。これもいつも通りにスムーズだ。低音感の確認をするまで、どうもそわそわする。そしてドラマーが入って、音を出し始めた時に、バスドラムを上げてみる。Lowはしっかりついてきている。この時に過去の引き出しを開ける。「そうだ!アルテックの感じ!」周波数でのチューニングというか、自分基準にこだわらずにシステムに委ねろ!という引き出し。ミックスしていって結果が出る。予想通り、とても品のいい音が出来ていった。むしろ自分の好きなサウンドである。d&BやJBLとは対極の手応え。MLAに接したことはあるが、自分でじっくりと使いこなすことは初めてに近かったので納得したことがある。自分のルーツであるセプトワン社や、兄弟社だったモブ=MSI社が何故このシステムを選んでいたのかがわかった気がした。木村史郎さん(セプトワン代表)が、こだわり続けたアルテックのサウンドを再現しやすいのかもしれないと感じた。MLAのYouTubeでかつての同僚の話も興味深かった。山崎氏、舩橋氏、の感じたままの言葉や、保手氏の理論に基づいた話など、もはやシステムチューナーとのタッグによって成り立っていることを改めて感じた。簡単には扱えないと感じると共に、大手町三井ホールも見えないところでの調整が成されていることを実感した1日だった。