まずは、この渋谷クアトロでのオペレートの機会を与えていただいたことに感謝です。1988年の開店時から、何十回、いや、、たぶん確実に100回以上は来ていると思うが、ここ10年くらい来ていなかったので、コンソールはデジタルに代わり、卓位置も変わっていた。かつての客席一番奥から、フロアに移り、また客席奥だが上部に空間があるところに戻っていた。環境は良くなっている。コロナ期を乗り越えて、こうして存在していることにありがたさを感じる。OutはTurboTMS-3からL-AcousticのArcsに変わったままだったが、コンソールはVi7000に変わっていた。まずは、照明、レーザーの搬入量に驚き、これはタイトな時間になるかもとの予想。PAは複雑ではなかったので、いつものチェックに入るが、どうしても音を出さないとできない調整がある。音量感と低域の処理である。これをシュートを待って始めていたら間に合わないので、ピンクノイズ測定とステージでのオシレーター測定を吊り込み中に始めさせてもらった。マネージャーからは、「低音がドスン!と来る感じの音で!」という要望があった。ドスン!なのであって「ボワン!」ではないのである。この言葉を意識しすぎると、通常の自分デフォルトが崩れて、ボワンになる可能性が高いので、重低音のステージチェックは欠かせない。もはや、よくも悪くも自分のPAはいつも通りしかないのである。そのドスンの中心になるバスドラム。今回は越智君だったので、ドラムの音質は信頼できる。いつものようにBeta52AとBeta91Aを使ってみる。Beta52Aは「ドン!」ではあったが、「ズドン!」ではない。過去の経験から、Beta91Aを低音にまわすことにした。そのLowを足すことによって、「ズドン!」が出来た。これは楽器の音によってはうまくいかないこともある。Bassの御供さんの八分が見えるタッチは信頼していたので、これでボワンにはならない確信はあった。EQを多用するとエネルギーが奪われ、ボワンになりがちなことも知っている。打ち込みと生音とのバランスなど、音量ではなく密度を埋められないところはあったが、低音感、ボーカル、大音量な「ロックな感じ」は作ることが出来たと思う。イヤモニだが必要なエアー感を作るためのステージとの音の混ざり具合を最終確認してピークを探し、本番に臨んだ。今回はステージライティングが凄すぎて、音は脇役。というかそれが自分スタイルでもあるわけだが、、。本番中、スモークで火災報知器の発報、一時中断などのアクシデントもあったが、予定外のアンコールまであり、久々の歓声の中でのライブ。立ちっぱなしのお客様はお疲れ様でした。トラブルは起きたことより、その後の対処。まずはインフォメーション、現状報告、再開のメドなど。人身事故対応のような機転が必要とされるところでした。クアトロのステージや客席は昔のままで数々の思い出がよみがえりました。人に歴史あり、店に歴史ありです。